宇宙産業を身近に
中学生が授業で人工衛星を作る―。未来の話ではありません。今、ブラジルの学校で実際に行われていることです。エンジニアの不足を受け、科学的に考えられる子供を育てようと授業に導入されています。そして、子どもたちの作った人工衛星は2016年12月9日(金)、種子島から打ち上げられます。
先月成功したH-IIAロケット31号機の打ち上げ(©MHI/JAXA)
宇宙はすぐそばに、近づいてきています。国主導で億単位のロケット開発が行われていた時代から、“Google Lunar XPRIZE”(民間組織で月にロボットを送るレース)に代表されるような、企業が宇宙を目指す時代へと変化しています。私たち電通宇宙ラボは「伝える」ことを強みに、非宇宙産業の立場から宇宙の楽しみを伝えていきたい。そのために芸術、食べ物、衣服、スポーツなど、様々な業種と宇宙をかけ合せることで、宇宙産業への参加者をもっと増やしていきたい。専門知識をかみくだいて、宇宙を易しくおもしろく伝えたい。私たちはどこよりも広い宇宙への扉へ、皆さんを案内したいと思います。
この記事は、その一歩です。
宇宙開発の歴史をふりかえると
1957年10月4日、地球初のロケットが打ち上がりました。ソ連によるスプートニク1号です。最高で地上950キロを飛び、ソ連とアメリカによる宇宙技術開発競争が始まりました。1961年にはガガーリンがボストーク宇宙船で有人宇宙飛行を達成。1969年にはアメリカのアポロ11号によって、人類が初めて月に降りたちました。
水の惑星 地球(国際宇宙ステーションから撮影)(©JAXA/NASA)
開発競争と並行して宇宙の商業利用もますます活発化しています。Intelsat(インテルサット。「国際電気通信衛星機構」とも)は、商用の衛生通信サービスを世界中に提供している事業者です。アメリカ、日本、イギリスなどにより1964年に発足し、テレビや電話の通信網を構築しました。1960年代終盤までに、8機の衛星によって全世界をカバーしています。
このような通信技術の進化に加え各機器が小型化、開発や輸送の費用も下がってきました。そこで、開発者のすそ野が国から民間へと広がってきています。その最たる例が、一辺10センチのキューブ型人工衛星「キューブサット」です。このキューブの中に太陽光発電パネルやアンテナなどを詰め込むことで、大学生でも宇宙開発が行えるようになりました。そして2003年、世界初のキューブサットの打ち上げが成功しました。開発者は、東京大学と東京工業大学の学生でした。
国のものだった宇宙開発に、様々な参加者が流れ込みました。アメリカではNASAにいた人材が民間に転職して、その知識やネットワークを生かす流れがあります。例えば民間でロケットを作ったSpaceXには、NASAや海軍などから人材が転職しています。日本で12月9日(金)に打ち上げ予定の7つの人工衛星にも、大学の研究室や、金属プレス機のメーカーなど様々な立場の開発者がいます。
打ち上げ予定の人工衛星と、開発者たち(©JAXA)
100年後の驚きも、明日の喜びも
私たちは「宇宙はおもしろい」と皆さんに伝え続けたいと思います。そのために、中学生が読んでも分かるように、最先端の情報を易しく紹介します。宇宙に興味を持つ人を増やすことで、宇宙が(国→私たち)へと広がっている流れに、追い風を吹かせようと思います。
宇宙研究の時間感覚は長いです。三十代で計画していた内容を、五十代になって実施するようなスケールです。世代をまたいで引き継ぎながら行われる国主導のプロジェクトでは、そうした大規模な研究開発が進められてきました。一方で今、民間企業の挑戦できる機会が広まったことで成果も多様化してきています。宇宙の成り立ちに迫るような息の長い研究も、スタートアップなどによる産業への利用も進んでいて、宇宙産業への参加者が広がってきています。
宇宙開発は「100年後の驚きも、明日の喜びも」与えてくれると思います。ますます多くの人が宇宙の楽しさを感じ、参加してくれるように宇宙ラボは発信を続けます。
今日からの連載では、12月9日(金)に打ち上げ予定の人工衛星について、開発者に分かりやすく語って頂きました。中には中学生がつくったものも。今、最もフレッシュな宇宙技術を紹介します。